
ALMOST WIPEOUT
SIDE 2 / Sub-Contents:"上方の博徒"をこのページから
読む事ができます。今回のお話の主役は、
警備隊主任、"振尾"
客間奉行 "角成"肱川公の屋敷に働く二人。嘉麻戸を呼び出した角成は
初対面の七に仕事仲間として
教えてあげたいです。(とても)
天正十七年ー、その上方の博徒は悪事を盛んに積む──積む──積む。
「振尾」(フリビ)とゆう痴れ。
其れは邪悪ではないとはいえ、「尾」を「振る」ような性格では、断じてない。“名は体を表す”などとぬかすウツケに、こやつを引き合わせてみろ。泣くぞ。ふと、おかしいね。
よくよく考えてみると、
苗字諱(イミナ)と正反対の生き方を選ぶ人間が、まっこと多い。七、そうは思わぬか?利八が役に立つか?
猛蔵は思いの外、大人しい。
学には荒くれが多くないか?
思うに、「親の願い」を遺伝が凌駕しちゃうんだね、アハアハアハハアハァーーー。
⸻なにしろこの任侠崩れ。
初手から見て取れるのは、「何が効くか」と「どこから許されぬか」という攻めの打ち筋。……つまりは彼の者も戦国浪人なれば、札付きの強奪主義。
粗野無法者の類に違いはなかったようで。闇市に火消し纏の如く、
派手に出入りしたかと思えば、
酒と砂糖を大名の袖元に流しこむ。
免罪符と密輸品の抱き合わせを思いつく冴え方をした時には、まっこと甘美な解放感があったろうな。そうだね、これはいうなれば
無人の果樹園の独占。
徳川家の花押で豪遊。
お咎めなし、濡れ手にケシ。俗世で育った金銭感覚を密ダレに漬けこんで。
うまあ、うまああああ。
って。ふふふ。今の旦那みて。みて。
みた?ふふふ、黒々と瞳の闇の深い事。一度見ていくといいよ。
夏のお祭り。昼間も悪くないけどねぇ。
嘉指闇市は長浜の文化。
甘い砂糖醤油の匂いはいいね。嘉麻戸ちゃん。
あんたも甘いもの食べる。
落ち着いたらおいで。闇市はひっそり沸々と運営る。
行きゆく人の"目"が乾いてる。
静かな暴力の気配、無遠慮で割って飲み放題って、そんな目つき。
流行りのでも買ったのか。いや違う。役人も町人も一重に。
"獣ならざる近しき何か"だ。七ちゃんにとっては
子犬だろうけどねぇ。顔の傷はどうしたの?
若くして治らない傷。
不思議だね?


長浜闇市の管理者にして「客間奉行役」を引き受ける。
その口は、刀より早く人を黙らせる。角成は其の知性を言語と政治以外に使わない
信条は「座上掌握至上主義」。
人の理解を超えた人に対する理解の深さ。
角成の謝罪のふみを読ませた大名が、泣いて一国をあけ渡せば、南蛮の船で深々とお辞儀を捧げる唐海賊。角成曰く、
「時に文は武よりも先に相手方の頭を飛ばせる。
だが闇市では、"文"よりも更に早いものが必要になる。
まぁ言うなれば、"風"。
視線が交差するそこから。両人は繋がり、終われば、相手に風を読ませる。馬鹿な事をするな。とな。」

嘉麻戸は「誰かに話すために聞いてるの?」と投げ返す。風が強い時の暖簾が如く、口周りをはためかせる。(相貌失認症を持つ嘉麻戸はその様に見えている)可愛くてたまらない。と同意義の音階で「違うってー、違うわよぉ。もう。」と、目を細めて溢れた愛心を表現している。「はぁ、もう良いかな。」
つまらない嘉麻戸。これに角成は不服そうに、
「私は七の事を思ってね?」
と、文脈以上には
不服そうではない。「これから屋敷に出入りするならさ。たまにはここにきなね。ね。」締めの挨拶の雰囲気につい、
足に力を入れていた嘉麻戸が違和感を感じて見上げる。
(実際には角成を見ている。)閉幕が降りてこない?
振り返ると角成は再び壇上、
そして、
機転を利かせた雰囲気で放たれる、
「振尾の話、だったね。」
投げる金があれば。
暗に示せた続行不可。空手、諦めた尻を地につけて、
浮かんだ言葉は"暖簾に腕押し"。パタパタな姉御に幕引きがないと悟れば、ビー玉二つ、目に入れたような無感情で、計画実行への下準備と捉える事と割り切った。

